医療情報|デング熱について

     

東南アジアでは蚊にさされる機会が多いと思いますが、蚊は甘く見ていると大変な目に合うかもしれません。
蚊が媒介する主な病気の一つ、デング熱について下記をご参照下さい。

デング熱とは?

ネッタイシマカなどの蚊によって媒介されるデングウイルスが感染して起こる、急性の熱性感染症です。
デングウイルスは日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科に属するウイルスで4種の血清型(Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型)に分類されます。どの型によっても同様の病気が起こり、症状から感染したウイルスの型は分かりません。
比較的軽症のデング熱と、重症型のデング出血熱があります。


感染経路について

蚊に刺されてから2~14日(多くは3~7日)の潜伏期間の後、およそ2割~4割の人に発症します。
・突然の高熱(発熱は2~7日間持続、熱をぶり返すことが多い)
・頭痛
・眼窩痛(眼の奥の痛み)
・体の痛み
・関節の痛み
・全身の倦怠感
・吐き気、嘔吐
・皮疹(皮膚の発疹。熱が下がったころに起こり、胸部・胴体・背中からはじまり、手足・顔面に広がる)


治療方法について

デング熱には特効薬が無く、一般的に対症療法が行われます。
・痛みと熱:解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)の投与
・循環血液量の減少・血液濃縮:輸液療法(生理食塩水・乳酸加リンゲル液・新鮮凍結血漿・膠質浸透圧剤など) 飲み薬

 

 


経過・予後について

輸液療法と解熱鎮痛剤投与といった対症療法で、発症後1週間程度で自然に回復するケースが多いようです。
まれに血漿の漏出や出血傾向を主症状とするデング出血熱に移行します。その時点で適切な処置が重要で、わずかではありますが、死に至るケースも報告されています。インフルエンザに比べると致死率がかなり低い病気です。

回復後は、罹患した型のデング熱ウイルスには抗体ができて生涯免疫を確保するため、同じ型のウイルスには二度と感染しません。他の血清型に対する交叉防御免疫*は数か月で消失し、その後は他の型に感染する可能性があります。二度目に感染した時に重症化する確率が高くなるといわれています。

*すでに持っている免疫が構造の似た病原体に対しある程度機能する反応


予防方法について

デング熱にはワクチンや治療薬が無く、蚊に刺されないようにすることが唯一の予防法です。ネッタイシマカは通常屋内に生息し、大抵は戸棚・ベッドの下・カーテンの裏・浴室などの暗くて涼しい場所に潜んでいます。
・長袖、長ズボン、靴下などの着用により肌の露出を少なくする
・虫よけスプレーを使用する
・室内では蚊取り線香や殺虫剤を使用する
・網戸、蚊帳を使用する
・規則正しい生活と十分な睡眠、栄養をとることで抵抗力をつける
蚊取り線香

 

 


注意事項

・服薬について
血小板数が低下することがあるデング熱の治療では、血小板の働きを弱める作用を持つアスピリンやイブプロフェンなどのNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛剤(ロキソニン・バファリンなど)や、それらを含む総合感冒薬の服用は危険です。
デング熱か単なる風邪や頭痛なのか分からない場合に自己判断で服用する場合は、デング熱には安全なアセトアミノフェン(コカール・パラセタモールなど)をおすすめします。

 

 

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